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バイオインフォ・バイオテクノロジーにまつわる情報

Omics

シングルセル解析⑧: 細胞の運命を確率的に推定する (Plantir, CellRank)

問題設計 CellRankは、Fabian TheisとDana Pe'erのグループから最近報告された、シングルセルデータから細胞が将来的に辿る状態遷移の可能性を確率的に求める手法。「細胞Aは細胞Bよりも細胞Cへと辿り着く可能性が高い」といった推定ができる。 www.nature.c…

Context-specific metabolic modelingについて

Context-specific metabolic modeling Context-specific metabolic modelingとは、トランスクリプトーム・プロテオーム等の発現情報を用いて、Recon3DやHuman1等の全代謝反応を含むGenome-scale metabolic model (GEMs)から、解析対象 (e.g. 特定の細胞、組…

マイクロバイオーム解析②: 16Sデータの前処理について

はじめに 16Sアンプリコンシーケンスデータの前処理・一次解析のプロセスを自動化しようとしたら、色々とわかりにくいポイントがあったので以下にまとめる。 シーケンシングまでの過程 データ前処理のプロセスを最適化するには、アンプリコンシーケンスの実…

データベース調査③: シングルセルデータベース

HCA Data Portal Human Cell Atlasで開発されたデータベース。2021年6月時点では55種類のヒト組織に由来する92プロジェクトのシングルセルデータが登録されている。 data.humancellatlas.org HCA Data Portalには基本的にユーザーにより登録されたデータが公…

データベース調査②: メタボロームデータ (HMDB, Metabolomics Workbench, MetaboLights etc)

代謝産物のデータベース GC-MSやLC-MSなどでヒト資料から取得したメタボロームデータのUntargeted解析*1を実施すると、全ピークのうち既知の物質へ帰属できるものは僅か1.8%しかないという報告がある*2。(素人目に見ても)ある意味宝の山とも言えるメタボロー…

マイクロバイオーム解析①:QIIME2を使ったメタ16S解析

QIIME2とは マイクロバイオーム界隈のバイオインフォマティシャンが共同で開発するメタ16S解析用のツールキット((ちなみにチャイムと読む))。自分が学生の頃は旧バージョンのQIIMEしか存在していなかったように思うが、2019年頃に公開されたらしい。 基本的…

空間オミクス解析③:Scanpy/Squidpyを使ってPythonで空間オミクスデータを扱う

Squidpyとは Squidpyは、シングルセルオミクスデータの探索的データ解析(EDA)に使われるScanpyを開発したFabian Theisのグループがつい最近公開した空間オミクス解析のためのPythonモジュール。 squidpy.readthedocs.io www.biorxiv.org 以前のエントリで空…

R:オミクスデータのためのクラス (SummarizedExperiment, MultiAssayExperiment)

はじめに 最近一つの実験で複数種類の高次元データを取得する機会や、ATAC-seqやChIP-seqなどのパラメータがゲノム領域に対応するデータ*1を扱う機会が増えてきた。これまで単一のデータをRで解析する際にはdata.frameクラスやmatrixクラスでデータを扱って…

空間オミクス解析②:解析用ライブラリについて

空間オミクス解析のライブラリ シングルセル解析が普及した背景はChromiumの様な商用の解析装置がリリースされたことに加えて、SeuratやScanpyなどの解析用ライブラリが整備されたことが大きい。これらのライブラリに付属するマニュアルを追いかけさえすれば…

空間オミクス解析①:テクノロジーの概要と現状

空間オミクスとは 組織中の場所と対応づいたオミクスデータを取得する手法。古くはレーザーマイクロダイセクションで組織断片をくり抜き、そこからオミクスデータを取得するような手間のかかる方法が一般的であったが、最近はより短時間で多くの領域からデー…

シングルセル解析③:ダブレット推定手法について

ダブレットとは シングルセル解析で現在主流になりつつあるのは10x Genomics Chromiumのようなドロップレットベースの方法である。この方法はドロップレットの中で磁気ビーズと細胞を封入し、mRNAの逆転写・増幅を行う (下図b)。ビーズにはポリT領域と、ビー…

シングルセル解析②:CITEseqデータの正規化手法について

CITEseqとは シングルセルトランスクリプトームと表面タンパク質発現量*1を同一細胞から計測する技術*2。概要としては以下のような手法である。 オリゴDNAを付与した抗体を使って細胞を標識。このオリゴDNAにはポリA配列*3、標的タンパク毎にに異なるバーコ…

シングルセル解析①: reticulateでRとPythonを両方使う

RとPythonどちらを使う? 10x GenomicsのChromiumが販売され始めてからシングルセル解析は身近なツールになり多くの研究者に使われるようになっています*1。 それに伴い解析のためのツールも続々と開発されており、誰でもデータを利用しようと思えばできる環…