Aurora blog

バイオインフォ・バイオテクノロジーにまつわる情報

Single-cell

シングルセル解析⑧: 細胞の運命を確率的に推定する (Plantir, CellRank)

問題設計 CellRankは、Fabian TheisとDana Pe'erのグループから最近報告された、シングルセルデータから細胞が将来的に辿る状態遷移の可能性を確率的に求める手法。「細胞Aは細胞Bよりも細胞Cへと辿り着く可能性が高い」といった推定ができる。 www.nature.c…

シングルセル解析⑦:RNA velocity

はじめに Trajectory inferenceはscRNA-seqデータから細胞状態の遷移パターンを推定する解析手法である。一般的にはこれらの手法は、細胞の遺伝子発現データの分布から、どの細胞種(細胞サブセット)が連続的な関係にあるかを推定することができるが、「ど…

シングルセル解析⑥: Ambient RNA contamination除去

はじめに 10X ChromiumをはじめとするDroplet-basedのシングルセル解析を行う場合にAmbient RNA contaminationが問題になることがある。Ambient RNAは細胞に由来しないRNAであり、処理中に壊れた細胞から溶出したRNAや、コンタミネーションなどが由来となる…

シングルセル解析⑤:ディープラーニングはシングルセル解析に有用なのか

はじめに シングルセル解析にディープラーニングを利用して、データのノイズ除去(≒インピューテーション)、細胞種の推定、バッチ補正などを行う事例が出てきている。本当に有用であるか些か疑問に感じていたので*1、まとめたいと思う。 研究事例 scVI 2018年…

シングルセル解析④: Compass: Flux balance analysisを使った代謝活性予測

シングルセルデータを使った代謝活性予測 先週のCellに以下の興味深い論文が出ていたので手法を読み解いていく。この論文では、Flux balance analysisをscRNA-seqデータへ応用することで各細胞の代謝状態を推定するCompassというツールを開発し、Th17のサブ…

データベース調査③: シングルセルデータベース

HCA Data Portal Human Cell Atlasで開発されたデータベース。2021年6月時点では55種類のヒト組織に由来する92プロジェクトのシングルセルデータが登録されている。 data.humancellatlas.org HCA Data Portalには基本的にユーザーにより登録されたデータが公…

シングルセル解析③:ダブレット推定手法について

ダブレットとは シングルセル解析で現在主流になりつつあるのは10x Genomics Chromiumのようなドロップレットベースの方法である。この方法はドロップレットの中で磁気ビーズと細胞を封入し、mRNAの逆転写・増幅を行う (下図b)。ビーズにはポリT領域と、ビー…

シングルセル解析②:CITEseqデータの正規化手法について

CITEseqとは シングルセルトランスクリプトームと表面タンパク質発現量*1を同一細胞から計測する技術*2。概要としては以下のような手法である。 オリゴDNAを付与した抗体を使って細胞を標識。このオリゴDNAにはポリA配列*3、標的タンパク毎にに異なるバーコ…

シングルセル解析①: reticulateでRとPythonを両方使う

RとPythonどちらを使う? 10x GenomicsのChromiumが販売され始めてからシングルセル解析は身近なツールになり多くの研究者に使われるようになっています*1。 それに伴い解析のためのツールも続々と開発されており、誰でもデータを利用しようと思えばできる環…